お肉の異名・隠語

お肉の異名・隠語

大人気!お肉の豆知識のコーナーです!
今回の話題は「お肉の異名(隠語)」についてご紹介。

『さくら刺し』や『もみじ鍋』といった料理名を聞いたことはありますか?
「お花や葉っぱが飾ってあるの?」と思ってしまいますが、これらはお肉を使った料理のことなんです。

◯ 桜(さくら)……馬肉
◯ 紅葉(もみじ)……鹿肉
◯ 牡丹(ぼたん)……猪肉
◯ 柏(かしわ)……鶏肉

こう並べてみると「聞いたことあるかも!」とピンと来る人も多いハズ。
これらの名前は江戸時代に使われていたお肉の隠語なんです。

なぜ異名が広まったの?

今から約330年前の江戸時代前期、江戸幕府第5代将軍・徳川綱吉によっていわゆる『生類憐みの令』が施工されました。

犬が偉くなった法律であるようなイメージがありますが、これは捨て子や老人、傷病人を保護して「命を大切にしよう!」という福祉政策のための法令です。動物も保護対象に含まれるので、それまで食用として扱われていた家畜のほか、野生の鳥や獣も食べたり傷つけたりすることが禁止されました。

法を破るときびしい罰則が待っています。
捕まりたくないけど、健康のためにもお肉は食べたい!

法の目をかいくぐるために庶民がはじめたことがお肉に別の名前(隠語)をつけることだったのです。
「山で良い紅葉が取れた」なんて話していても、これだけでは本当の紅葉の話かシカの話かわかりません。

この異名は法令が廃止になったあとも使われ続け、江戸時代に庶民の間で定着して行きました。

どんな由来があるの?

桜(さくら)……馬肉

・切り口の赤身部分がわずかに桜色となるから
・桜が咲く季節の馬は脂がのっていて美味しいから
・千葉県佐倉には古くから馬の牧場があり「馬と言えば佐倉」だった
などなど諸説あるようです。

紅葉(もみじ)……鹿肉

組み合わせが抜群に良い、調和して絵になる、という言葉「紅葉に鹿」から。
鹿と紅葉が描かれている花札の絵柄も有名ですよね。

牡丹(ぼたん)……猪肉

こちらも吉祥を意味する良い組み合わせ「牡丹に唐獅子」から。
江戸しりとり唄に「牡丹に唐獅子」というフレーズがあり、広まったとされます。
獅子はライオンのことですが、獅子=しし、という音からイノシシ肉のことを指すようになったようです。

柏(かしわ)……鶏肉

ニワトリというと白いブロイラーを想像しますが、日本在来種のニワトリは羽の色が茶色です。
その色が、紅葉したカシワの葉に似ているためと言われます。

由来には諸説ありますので、一例をご紹介しました。
こうしてみると、なかなか風流な取り合わせですよね。

牛と豚は?

では現代の食卓によくのぼる牛や豚はというと……?
実は異名がありません!

奈良時代にはすでに牛も豚も日本に伝来していたようですが、
食肉を隠す必要があった江戸時代にはほとんど食べられていなかったのです。

農耕や運搬に利用されたり、肥料を取るために飼育されたりと、
食べるのための畜産業ではありませんでした。

本格的に日本中で食べられるようになったのは19世紀の明治時代に入ってから。
往来で堂々と食べることが出来たので、異名も必要なかったのです。

その他の動物の異名

有名どころ以外にも、こんな異名があります!

◯月夜(げつよ)……兎肉
月にはうさぎが住んでいるという伝説から
◯銀杏(いちょう)……鴨肉
カモの足がイチョウの葉に似ていることから
◯鉄砲(てっぽう)……河豚(ふぐ)
「当たると命を落とす」ことから

他にも「滋養強壮の薬」としてこっそり取り扱われていたりと、
どうにかしてお肉を食べたい!という思いによって様々な名前がつけられていたようです。

禁止されるどころか、世界中のあらゆるお肉が流通している現代。
「もしこれが禁止されたらなんて呼ぶ?」なんて想像してみるのも面白いかもしれませんね。


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